貸付債権を基本としつつ,その性質,内容等がこれとおお 7 むね同様又は類似の債権をいうものと解するのが相当であること,そして, この点に関する控訴人の主張(すなわち金銭の交付からその返還までに一定 の期間が設けられること等により,債務者に対して信用が供与される金銭債 権であって,その期間において債務者が元本を使用することができ,その対 価としての利子が生じ得るものをいうとの解釈)を採用することができない ことは,いずれも原判決に説示するとおりである。
したがって,上記のとおりの「信用の供与」という経済的実質を重視した 解釈基準を採用すべきことを前提とした控訴人の当審における主張も採用す ることはできないというべきであるが,以下,更に敷衍する。
(2) 控訴人は,原判決の採用した解釈指針?に従うと,同号は,国内源泉所 得として課税するにふさわしいものを類型的に定める趣旨に基づく規定であ るから,同号の「貸付金」に「準ずる」か否かの解釈においては,「利子」 という所得を生み出す源泉としての「貸付金」の性質が重視されるべきであ ると主張するが,控訴人指摘の同号の上記趣旨から,当然に,控訴人主張の 上記「信用の供与」という解釈基準が導かれるとはいい難い。
また,所得税基本通達及び法人税基本通達等の規定は,課税庁内部では拘 束力をもつが,裁判所が拘束されるものではないのであって,その上位規範 である所得税法の規定を解釈するに当たり参考となり得えても,その解釈基 準の根拠として取り扱うことは,前提において失当であるというべきである し,控訴人が指摘する上記各基本通達における規定のすべてが,控訴人が主 張する「信用の供与」という解釈基準でもって説明し得るものといえるかは 疑問である(例えば,法人税基本通達20−1−19(3)に規定する「前渡 金」についてみれば,控訴人主張のように買主が売主に「信用の供与」をす る目的で前払代金を交付されるとみることも可能であるけれども,同通達 (2)に規定する「敷金」についてみると,敷金には,利息が付されないのが 通常であるし,これが賃借人から賃貸人に一定期間使用収益される前提の下 8 に交付されるとしても,賃借人が賃貸人に「信用の供与」をする目的で交付 されるものとみることは到底できない。
)。
(3) 次に,控訴人は,原判決の採用した解釈指針?,?からしても,「貸付 金(これに準ずるものを含む。
)」の「利子」を申告納税でなく源泉徴収課 税の対象とした,同号の所得税法の中での位置付けや,適用結果の公平性及 び相当性等の実質的な検討をしてみても,本件前払条項に基づき,被控訴人 が一定期間使用収益し得る前渡金として受領した本件分割払金は,被控訴人 に信用供与するものであって,「貸付金(これに準ずるものを含む。
)」に 当たる旨主張する。
なるほど,所得税法212条によると,同法161条6号の「貸付金(こ れに準ずるものを含む。
)」の「利子」について申告納税でなく源泉徴収課 税の対象としており,このような同号の所得税法の中での位置付けからする と,同号は,源泉徴収課税の要件たる事実が明白で,税額の計算が容易であ る等のため,あえて納付すべき税額の確定に特別の手続をとらなかったもの と位置付けられるとしても,そのことから当然に控訴人主張の上記「信用の 供与」という解釈基準が導かれるものではないし,課税の公平性や相当性, 中立性が控訴人主張の上記「信用の供与」という解釈基準を採用しないと確 保されないと断ずることもできない。
(4) 第3に,控訴人は,原判決の採用した解釈指針?からしても,控訴人の 解釈は,源泉徴収義務者の予測可能性等に反するものではなく,かえって原 判決は所得税法の明文規定に反して,逆に上記予測可能性等を損なうもので あるとし,その根拠として,貸倒引当金の必要経費算入を認めた所得税法5 2条が「前渡金」を貸付金と同列に扱っていることを挙げる。
しかしながら,同条1項により必要経費への算入が認められる貸倒引当金 の対象債権として,貸付金と並んで「前渡金」が明記されているが,同条2 項により計上の認められる貸倒引当金の対象債権としては「前渡金」が明記 9 されておらず,所得税基本通達52−17においても,同条2項に「前渡 金」が含まれないことが明記されていることに照らしても,信用供与を重視 する控訴人の解釈が,租税法規が備えるべき客観性,源泉徴収義務者の予測 可能性及び法的安定性に資するとまでいえるものではない。
また,所得税法 施行令283条1項1号が「資産の譲渡又は役務の提供の対価に係る債権」 を「貸付金(これに準ずるものを含む。
)」に含まれることを明らかにして いるが,これは,同条項から明らかなとおり,売買による代金支払が資産の 引渡時までにされず,6か月を超える延べ払いが行われる場合,すなわち割 賦売買の事案を想定したものであり,同施行令の上記条項の存在も信用供与 を重視する控訴人の解釈の根拠たり得るものともいえない。
(5) さらに,控訴人は,本件返還条項が付された本件分割払金について返還 される場合が原則か例外かを問題にする原判決の立場は,租税法規が備える べき客観性や源泉徴収義務者の予測可能性及び法的安定性を損なう旨批判す る。
しかし,原判決の上記説示は,原判決が,所得税法161条6号の「貸付 金(これに準ずるものを含む。
)」の解釈に当たり採用する消費貸借の本質 的要素である返還約束の有無に関する控訴人の仮定的主張に対し,本件造船 契約における本件返還条項の位置付けに照らして控訴人の上記主張を排斥し たものにすぎず,控訴人の上記批判は当を得たものとはいえない。
そもそも,原判決の上記説示のとおり,本件造船契約において,被控訴人 が約定どおり船舶の引渡を履行すれば本件返還条項の適用はなく,約定の遅 延損害金は発生しない性質のものであるから,本件分割払金の支払をもって 信用の供与ということ自体無理があるといわなければならない。
(6) ところで,控訴人は,所得税法161条6号の「貸付金(これに準ずる ものを含む。
)」の「利子」に当たるかどうかについて「信用の供与」を重 視する解釈基準からすれば,法定解除の場合は,本件のような約定解除の場 10 合と異なり,これに当たらないという。
しかしながら,本件のような約定解 除の場合も法定解除の場合も,その解除による効果として債務者に原状回復 義務が生じるとともに遅延損害金が発生する点では同じであって,その遅延 損害金の割合が約定利率によるのか法定利率によるのかといった点で異なる にすぎないというべきである。
そうすると,遅延損害金の割合に関する約定 の有無によって同号の「貸付金(これに準ずるものを含む。
)」の「利子」 に当たるかどうかについて別異に取り扱う合理的理由は見出し難いのであっ て,この点からしても控訴人の「信用の供与」を重視する解釈基準は採用す ることができない。
(7) なお,控訴人の予備的主張も,控訴人の「信用の供与」を重視する解釈 基準を前提とするものであって,これが採用できないことは上記説示のとお りである。
3 よって,本件各処分を取り消した原判決は相当であって,本件控訴は理由が ないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
5 争点1−5(原告による,本件業務委託契約に基づく平成16年6月分ない し9月分の業務委託料の請求が権利濫用によるものと評価されるべきものか) について 〔被告の主張〕 (1)本件は,単なる特許ライセンス料や業務委託料の支払請求の事案ではない。
Cのアイデアを実現して,製品を販売するために多くの関係者が参集し,原 告が製品を開発し,被告が製造販売するという役割分担が定められ,原告の 32 活動資金を捻出するために本件許諾契約及び本件業務委託契約が締結され, これを直接の根拠として,被告から原告に対し既に多額の資金が支払われて いる事案である。
そして,原告は,被告に対し,期限までに製品開発を完了させるという義 務を負担していたにもかかわらず,期限を遵守しなかったばかりか,平成1 6年9月に原告と被告とが決裂するまで,製品開発を完了することができな かった。
原告が製品を開発することができなければ,被告において,製品を製造販 売することはできない。
本件事業において,当初予定されていたCのアイデ アを実現した排ガス浄化装置を販売することができなかった責任は専ら原告 にある。
他方で,原告は,排ガス浄化装置の開発という債務を履行せず,自らは何 らの犠牲,出費,損失を負うことなく,本件事業への出資者である被告と絶 縁したにもかかわらず,現在では,本来被告との協調がなければできなかっ たはずの排ガス浄化装置事業を自ら行っている(乙22)。
(2)また,本件許諾契約は,年間ミニマムロイヤルティの規定を置くとともに, ライセンシーが正当な理由なく平成15年11月30日までに本件許諾製品 を販売しない場合には,ライセンサーは一方的に本件許諾契約を終了するこ とができる旨規定されている(甲1の第8条8−6)。
他方,本件許諾契約 には,ライセンシーが契約を解除又は解約すること,その他ライセンサーに 非違行為があった場合に制裁を課すことができるような規定は設けられてい ない。
以上のとおり,本件許諾契約は,一方的にライセンサーである原告に有利 な内容となっている。
(3)原告の再生手続(当庁平成19年(再)第191号)において提出された 財産目録・貸借対照表提出書においては,被告に対する売掛金(本訴請求債 33 権)6720万円の清算価値は「ゼロ」とされていること(乙7の5枚目), 原告作成の再生計画案において,「・・・下記訴訟において,判決または和 解等に基づき請求額の全部または一部を回収した場合には,訴訟および回収 に要した費用を控除した残額を各確定債権の元本額に按分して,回収後1か 月以内に支払う」旨記載されていること(甲8の3頁。
これによると,本件 訴訟において勝訴すれば債権者に対する配当を行うが,敗訴しても債権者に 対する配当が行われないだけということになる。
)からすれば,本件訴訟の 勝敗は,原告の再生計画の帰趨には影響を与えないことが明らかである。
こ の意味において,原告を勝訴させて保護すべき実益はない。
(4)原告は,株主に交付した第6期決算報告書の損益計算書(乙10の16枚 目)の内容を,正当な理由なく改ざんし,「貸倒引当金繰入額」として67 20万円を計上した新たな損益計算書を作成して再生裁判所に提出した(乙 9の3枚目)。
また,監督委員補助会計士からの意見書(乙8の5頁)に,公認会計士の 意見として,原告と被告との間には「取引実態がなかったものと考えられ る」と記載されているとおり,客観的には原告の本訴請求債権は成立し得な い。
上記公認会計士の意見は,再生債務者である原告及びその申立代理人弁 護士から提出を受けた資料や聴取調査の結果に基づいて作成されたものであ るから(乙8の1頁),原告と被告との間に本訴請求債権に見合う取引実態 がなかったという事情は,原告も十分に認識していたといえる。
(5)これらの事情に照らせば,原告が本件業務委託契約に基づき平成16年6 月分ないし9月分の業務委託料を請求すること,本件許諾契約中に年間ミニ マムロイヤルティに関する規定があることを奇貨として,平成15年分の年 間ミニマムロイヤルティを請求することは,いずれも権利濫用に当たり,許 されない。
(6)加えて,別件訴訟において,原告は,原告と兼坂技研との間の兼坂契約2 34 の効力を否定しながら,他方で本件訴訟においては,本件許諾契約及び本件 業務委託契約が有効であることを前提とする主張をしている。
本件訴訟における原告の請求は,別件訴訟における主張とは矛盾するもの であり,信義則や禁反言の原則に反するものである。
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